「男性でも、初心者でも、50代でも、通っていいんでしょうか」

講師紹介
今回は、50代の男性執行役員・Cさんの成長記録をお届けします。幼少期にピアノを習い、大人になってフルートに憧れた。でも「男性が通える個人教室」を探すのに、こんなに苦労するとは思っていなかった——
そんな入り口から始まったレッスンの記録です。
1. 体験レッスン前の状態——「男性可」の教室が、見つからない

Cさんが初めてお問い合わせくださった時のことを、今でもよく覚えています。問い合わせ内容欄が、丁寧で詳細に記載されていたからです。
子どもの頃にピアノを習っていたこと、ソナチネのあたりでつまずいて、そのまま辞めてしまったこと。大人になってまた楽器を、と思った時にピアノは費用・置き場所・音の問題で現実的ではないと感じたこと。それならフルートを、と大手に通ってみたが内容が物足りなかったこと、調べ始めたら個人教室は女性限定の教室が多かったこと。
「初心者で50代、男性でも、通えますでしょうか。」お問い合わせフォームに、そう書いてくださっていました。私にとっては少し驚いた文章でした。
2. 体験レッスンで起きたこと——「ト音記号だけ」という解放感

体験レッスンでまず驚いてくださったのが、譜面のことでした。
ピアノはト音記号とへ音記号を同時に読みながら、右手と左手を別々に動かします。ピアノは88の鍵盤がありますから、音域も幅広い。片手ずつなら読めて動かせる、でも両手を合わせた瞬間から崩壊が始まる—— ピアノを経験した方なら、あの感覚に覚えがあるのではないでしょうか。
フルートの譜面はト音記号のみ、一段しかなく、二段が同時進行することは滅多にありません。「右手パートだけ読んでいればいい感覚に近いんですね」とCさんが言った時、私は思わず笑ってしまいました。そうなんです、そういうことなんです。
以前にご家族が使われていた楽器を体験レッスン時にお持ちいただけ、その日のうちに音を出す感覚をつかんでいただけました。
3. 数ヶ月後——続いていること自体への、静かな驚き

「続くかどうか、自信がないんです」と最初に正直に話してくださっていたCさん。恐らくピアノのご経験からそのようなご不安をお持ちだったのかと推察いたします。しかし、数ヶ月が経ち、その言葉が少しずつ変わっていきました。
月2回のレッスンが、仕事の予定を組む時の「動かさない予定」になっていた。練習も、「やらなければ」ではなく「少し吹いてから寝よう」に変わってきた、と話してくれたのがこの頃です。「仕事後のフルートの時間がとても楽しく、充実している」とレッスン後にお話しいただいたこともありました。
音が上達していることよりも、自分が「継続できている」「私生活が充実している・充足感がある」という事実に、Cさん自身が一番驚いていたように感じています。
4. 半年後——音への集中と、指が追いついてきた感覚

半年が経った頃、Cさんの音の出し方に迷いが減ってきました。
Cさんは当初から「とにかく音をちゃんと出したい、基礎をきちんと学びたい」という軸が一貫していました。あれもこれもではなく、ひとつのことを丁寧に積み上げていく向き合い方をされる方でした。「何でもそうですが、自己流ではなく、まずはきちんと基礎ができていないと」とも仰っていました。
楽器の持ち方と構え方が自然になり、基礎の大枠が整い、指の動きが整ってきたことで、次は音そのものに意識を向ける余裕が生まれてきたのもこの頃です。「もう少し柔らかく鳴らしたい」「この音の入りがもたついてはっきりしない」「頑張って吹いている感があるように思う」という言葉が出てくるようになりました。自分の音を、自分で聴けるようになってきた証拠です。
これはとても大事なポイントで、自分の音をリアルタイムで聞くことを忘れてしまう、という現象は誰でもよくあることです。
また、レッスン後に少し話していく時間が生まれ、仕事の話、週末の話、楽器をどこに置いているかという話も聞かせてくれるようになりました。フルートが生活の一部になられている、と感じていました。そしてこの時期に、当教室に問い合わせてくださった時のことを少しお話くださりました。
「個人教室を探したら、男性講師は少なく、女性講師や女性限定の教室が圧倒的に多かった。先生との相性や場所のこともあるし、男性講師のところに通い続けられる確率は低いと考え、『男性NGとは書かれてなさそうだが、女性講師だ』と、諦め半分で由佳先生に問い合わせたんです。」
5. 1年後——吹きたい曲ができた

レッスンを始めてちょうど1年が経った頃、「基礎をきちんと学びたいし、教本もとても楽しいので」と仰っていたCさんが、「この曲、いつか吹いてみたいんですけど」と、ある楽譜を持ってきてくださりました。Cさんがずっと好きだったジャズの曲でした。
ジャズとなると、音感やコードなども学ぶ必要があり、クラシックとは別のルールのジャンル。今すぐには難しい部分がありました。これをお伝えすると「なるほど、だから自分で吹いてみると何だか物足りなく、棒吹きに聴こえるんですね」と仰っていました。
しかし、Cさんはピアノのご経験もあり、調については既に学び始めており、音感もある。耳も良いし、上記をクリアできれば、と伝えると、Cさんは「じゃあそれを目標にします」と言いました。当教室では普段眠っている事が多い、ジャズ教本の出番が決まりました。
「男性でも通えますか」という問いから始まった1年。今、Cさんには演奏・表現したい音楽があります。1年前に音楽・自己表現を諦めかけていた方が、今や充実感と充足感・希望と目標とともに、楽しそうにフルートを吹き、当教室に通ってくださっています。
最後に
「自分にもできるかな」と思ったその気持ちが、最初の一歩です。当教室では入会前に、無料体験レッスンを実施しています(お一人様1回限り)。既にご入会を決めてくださっている方でも勿論ご利用いただけるものです。
楽器をお持ちでなくても、経験がなくても、ブランクがあっても大丈夫です。男性・女性問わず、年齢問わず対応していますので、まずはどんな小さなことでもお気軽にご相談ください。
補足情報
著者情報
「男性でも通えますか」というご質問をいただくたびに、私はいつも「もちろんです」とお答えします。そしてその言葉の裏には、Cさんのような記録が積み重なっています。フルートや音楽を純粋に楽しみたい方に性別は関係なく、音楽や文化は、どんな人の前でも平等であるべきものです。
よって、必要以上に制限をかけることも、それもどうかと個人的には感じるのです。フルートは、性別も年齢も、過去の挫折も関係ない楽器です。ピアノで挫折した経験も、長年の憧れも、すべてがレッスンの土台になります。
あなたのペースで、一緒に始めましょう。
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