その問い合わせ文は、私への手紙だった

講師紹介
今回は、忙しい日々の中でフルートと向き合い続けたKさんの記録をお届けします。
これまでたくさんの生徒さんにお越しいただきましたが、「嬉しい」という表現を言葉の通り表してくれた方のお一人です。
詳細をぼかしてお届けします。
1. 「こんな私でも大丈夫ですか?」——問い合わせ文に書かれていたこと

問い合わせフォームにお書きいただいた文章を、今でもよく覚えています。
- 飽きっぽい性格でなかなか続かない。
- 練習する場所・時間を確保するのが難しい。
- 以前少し習っていたが、まだほとんど初心者。
- 綺麗な音が出せず、楽譜を読むのが苦手。
- 仕事をしながら、子育てをしながら。
最後は、「こんな感じですが、大丈夫でしょうか?!」と締めくくられていました。これだけのことを、最初のメッセージに正直に書いてくれる人は、中々いません。私は、『この方は、自分のことをよくわかっている。だから怖くて、聞いてくれたんだ。』と感じました。
「大丈夫ですよ」と、お返事を書きながら、体験レッスンでKさんにお会いするのが楽しみになっていました。
2. 音がスカスカだった原因

体験レッスンで吹いていただいて、すぐにわかりました。音が出ていないわけではない。しかし、楽器に息が入り切っていない。
正確に言うと「唇と角度で、音が鳴る形に無理やり持っていっている」状態でした。これは、初心者の方にはよくあることで、Kさんが特殊なわけではありません。
まずアンブッシュアと息の方向を整えることから始めました。そして姿勢のこと、指のこと、楽器の扱い方や掃除の仕方まで、改めて一から丁寧に。「掃除の仕方を教わったことがなかったので、掃除方法が存在することを知らなかった」と仰っていました。
体験レッスンで、音はすぐに変わりました。あのスカスカ感(所謂薄く、密度のない、風の音がする音)が消えたのです。Kさんは「すごい! 音がスカスカじゃない! ちゃんと出てる!」と、文字通り飛び跳ねて、大変喜んでくださいました。
勿論、1回のレッスンで再現性が生まれるわけではありません。そしてKさんは毎度真摯に、真剣にレッスン内容を受け止め、ご無理のない範囲で練習を行ってくださいました。おかげで、数カ月後のレッスン時にはスカスカ感は全くなくなっていたのです。
あるレッスンの日、Kさんがふと言いました。「ほんの少しの角度でこんなに変わるんですね… このまま、楽器を組み立てたまま持って帰りたいです。」その言葉をお聞きし、私も嬉しくなりました。
何度ご自身で試しても変わらなかった音が、ずっとスカスカだった音が、初めて変わった瞬間でした。Kさんが後にくださった感想に、こんな言葉がありました。「スカスカだった音がどんどん改善していて、練習も以前と違ってとても楽しいし、自信に繋がります!」
以前は何人か先生に習っても変わらなかったのに、という言葉も添えてくださっていました。何度辞めても「フルートが好き」という気持ちは消えなかった方が、初めて手応えを感じていました。
3. 譜面を束で持ってきた日

Kさんには演奏したい曲がたくさんおありでした。体験レッスン時もそうだったのですが「好きなアーティストの曲があればお持ちください。」と話すと、次のレッスンで、譜面の束を抱えて来てくださいました。鞄には、好きなアーティストの楽譜がぎっしり!
少し曲数を絞っていただくようお伝えしたところ、「自分の今のレベルに合う曲を選曲してほしい」とのことで、たくさん曲の説明をしてくださいました。楽しそうに、でも少し恥ずかしそうに見せてくれた顔を、よく覚えています。
「好きな曲や吹きたい曲はたくさんあって、いつか吹きたい、と思って楽譜をためていたんです。」
Popsはリズムが難しいジャンルです。言葉数が多く、テンポのノリやリズムを掴む必要があります。
Kさんはリズムが少し苦手でしたが、感覚がいい方でした。同時に楽譜にも苦手意識がお有りだったため、これらと同時に、感覚と結びつけながら楽譜の読み方やリズムなどを学んでいただきました。Kさんのように感覚の良い方は、すぐに習得できる反面、再現性や自走は苦手になりがちなため、これを回避するためです。
音楽的にこうしたい、という感覚もすでに芽生えられており、どう表現するかというところにも少しずつ触れ始めていました。以前の教室で使っていた教本も並行して続けてくださったので、基礎と好きな曲、両方の柱でレッスンが動いていました。
上手くいったとき、Kさんは体験レッスン時同様、飛び跳ねて喜んでくださっていました。しかし、楽器を持っていることを考慮され、楽器を守りながら飛び跳ねる姿は、端で見ている私まで嬉しくさせてくださいました。
「レッスンの後は、いつも吹きたくて、練習したくなるんです。すぐ帰って練習したい! でも、これから子供を迎えに行って、それから連絡します!」こんな嬉しいお言葉に、笑顔でお帰りになることもしばしば。毎回レッスンにお越しになる度に、その嬉しそうな顔をされていたのが、印象に残っています。
4. 「自分の気持ちと葛藤していました。」退会連絡に書かれていたこと

その年の秋、Kさんの生活にさまざまな事情が重なりました。しかし御本人は「再開したい・漸くいい先生に出会えたのだから続けたい」と仰ってくださり、頑張っておられました。
「フルートも続けたい、いい先生にも巡り会えて、とても楽しくて仕方なかったので、自分の気持ちと葛藤していました。」
いただいたメールの、この続きを読んで、胸がいっぱいになりました。そして、「しばらく沢山、沢山、考えた結果」という言葉が、彼女がどれだけ悩んだかを表していました。
退会を決められた理由は、Kさんの気持ちが冷めたからではありませんでした。むしろ逆でした。好きで、楽しくて、続けたくて、それでも今は無理だと、ご自身で判断されていました。
いくら好きでも、私達には仕事や、生活・家庭があります。気持ちだけで動けない事情も出てきます。
最後にこう書いてくれていました。
「フルートは大好きなので、隙間時間に少しずつ吹いて続けていようと思います。また、再開できる日を夢見て毎日を頑張りたいと思います。」
5. 夢見て、待っている

Kさんとのレッスンは、半年ほどでした。長くはない時間でしたが、音は確実に変わっており、楽しみ方も変わっていました。
人により基準は違うのでしょうが、飽きっぽい、というのは個人的には数週間や数ヶ月しか続かないことを指すと感じます。Kさんは、これよりもはるかに長い、半年という時間を当教室で過ごしてくださいました。そして、「飽きっぽい性格で続かない」と書かれた方が、辞めたくなくて、辞めた後も吹き続けると仰っている。
「とても楽しく、わかりやすく、素敵なレッスンをありがとうございました。」
講師として、こんなに嬉しくなるお言葉はないと感じました。
続かなかった理由が「自分の性格」だと思っている方は、意外に多いと私は感じます。しかし多くの場合、本当の理由は別にあることも多いのです。教わり方や講師との相性・環境・事情・そのときに合うやり方を提示できる人がいなかっただけだったりもします。
Kさんの音が変わった理由は、Kさんが変わったからではありません。理由と原因が分かったからです。個人的には、Kさんにはずっと、あのお可愛らしい笑顔と、感情を身体いっぱい使って表現される御心を持っていていただければ嬉しいと感じます。
「再開できる日を夢見て毎日を頑張りたいと思います」
その日が来たとき、またここから続きを始めましょう。
最後に
「こんな私でも大丈夫かな?」と思われている方へ。
大丈夫です。何度途中でやめてしまっても、フルートが好きという気持ちがあるなら、それで十分です。寧ろ、好きな気持ちが本物である証拠ではないでしょうか。何より、続かなかったのはあなたのせいではないかもしれません。
当教室では入会前に、無料体験レッスンを実施しています(お一人様1回限り)。まずはお気軽にご相談ください。
補足情報
著者情報
「飽きっぽい」「続かなかった」「音が出ない」など、そういったお気持ちでお問い合わせいただく方ほど、実は本気でフルートや音楽と向き合おうとしている方のように感じることが、私にはあります。Kさんのように、環境と方法が変わるだけで、音も気持ちも大きく動くことも多々あります。
体験レッスンでは、今まで誰にも言えなかったお悩みも、ぜひお話しください。「初対面の人にはちょっと…」という方は、問い合わせ概要にお書きいただいても問題ありません。
あなたの「続かなかった理由」を、一緒に整理するところから始めましょう。
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